ナガサキノート あの日、人々の足取り
エンジニア・白井 政行
朝日新聞長崎版の連載「ナガサキノート」が三千回を迎えるにあたって、連載の証言をもとに作成したデータビジュアライズコンテンツ。爆心地から数キロ圏内にいた被災者を中心に、証言から得られた当時の足取りを3Dマップ上に再現しました。それぞれの人物アイコンからは被災者の証言記事を読むことができます。世界新聞ニュース発行者協会主催の「アジアデジタルメディア賞」を受賞しました。
一番見せたい情報はたくさんの証言者の足取りです。原爆投下前と投下直後、つまり足取りは8月9日の長崎の日常と非日常を表現しています。意識が常に人物アイコンに向かうよう情報量に気を遣い、ユーザーが8月9日を経験できるシンプルな構成を目指しました。近年はスマートフォンから情報を得るユーザーが圧倒的に多く、小さい画面でもコンテンツを成立させなくてはなりません。端末の特徴やユーザーの行動を分析して、地図アプリのようなストレスのない操作性を実現させました。加えてPC版以上に情報量を調整したことで、全ての端末で当時の長崎を経験できるコンテンツとなりました。
制作は楽ではありませんでした。大量のデータ類の処理や遠方の長崎総局との顔の見えない連携作業は初めてで、手探りで進めなければなりませんでした。また、膨大になったデータは大胆に圧縮しなければ表示に時間がかかりすぎてユーザーは離れてしまいます。アイデアを積み重ねながら課題を克服し完成したコンテンツは、日本だけでなく海外からも大変評価されました。テキストが読めなくても長崎を伝えられたことはデータビジュアライズとして最高の称賛です。